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21世紀COEページ

知的財産法制研究センター(RCLIP)

Capital Markets Association for Asia (CMAA)
   




グローバルCOE中間評価(平成22年)に対する率直なコメント




 我々研究者は、研究内容に対する専門家による評価に対しては謙虚でなければならないことを常に肝に銘じており、いったん評価が下されたらその評価に対しては異を唱えることなく、その趣旨に沿った対応に努めるべきであると考えている。しかし、今回の中間評価については、きわめて遺憾ながらこれに対する率直な見解を表明せざるを得ないと考えるに至った。今回の中間評価に、以下に示すような根本的な疑問が存在するにもかかわらず、何らの異を唱えることなく、これを了解しているかの姿勢でいることは、この間、拠点形成目的に適うと信じて全力で研究活動を行ってきた拠点形成者、企画責任者、この企画のために多大なご協力をいただいてきた学内外のきわめて多くの研究者、RAその他の院生、事務局員等々に対する責任を果たせないと考えざるを得ないためである。特に以下に述べるように、企業・金融・資本市場法制を研究テーマとする本拠点への中間評価を行った審査・評価部会専門委員に商法・会社法の専門家が「皆無」であることは、専門外の研究者「のみ」による評価をいかに受け止めるかという問題とならざるをえず、学問の精神の根幹に関わる問題として受け止める必要がある。私としては、このような率直なコメントを公表することには正直なところ非常な逡巡を覚えた。この文書は中間評価直後に作成していたが、こうした文書を公表することについては、GCOE制度によって大いなる恩恵を享受してきた者として苦渋の判断を必要とした。しかし、何も意見を述べないことの弊害の方が大きいことを痛感するに至り、このたびこれを公表することとした。もとより、この公表に伴う一切の責任は私個人に帰するものである。

1 本拠点の研究活動に対する従来の評価
 資料@は、グローバルCOEの前身である21世紀COEの採択時の採択理由であるが、ここでは「日本の喫緊の課題につき、制度の基本構造に遡って歴史的・哲学的に掘り下げた研究を行い、それを踏まえてあるべき姿を探求するという、目標を高く掲げた計画となっている点が評価できる」とされている。
 資料Aは、この21世紀COEの中間評価であるが、ここでは総括評価として、当初計画は順調に実施されているとされ、コメントでも「旺盛な研究活動が国際的な広がりをもちつつ展開されている。戦略的な目標を掲げ、社会との連携を図りつつ、法分野横断的な研究を行っている点を高く評価することができる。」と評価され、かつ(留意事項)でも、「世界最高水準の拠点を形成していただきたい。」との指摘を受けた。
 資料Bは、21世紀COEの事後評価であるが、ここでも「国際的な拡がりをもった活動をしており、『企業と市場と市民社会』を共有する法分野横断的な研究を推進し、日本の法の総合力を高めるとの目的は十分達成されたと評価できる。」「研究活動面については、拠点形成目的にかなった積極的な研究活動により、比較法的視野も含め、新しい展開が深化しつつあり、大きな成果をあげていると評価できる。」とされている。
 資料Cは21世紀COEの後続企画であるグローバルCOEの採択時の採択理由であるが、ここでは「21世紀COEプログラム『企業社会の変容と法システムの創造』の教育研究拠点でこれまで挙げてきた実績をさらに発展・深化させ、より高次の目標である成熟市民社会の構築と、これと一体の企業法制の再構築という新しい法律学の創造を目指す計画であり、優れたプログラムであると評価できる。」「研究活動面においては、『企業社会の変容と法システムの創造』の研究教育拠点で挙げてきた質の高い実績及び事業推進担当者の活発な研究活動から、日本発の企業法制の創造という高次の目標に向けた研究成果が期待できる。」とされている。
 以上に対して、資料Dはこのたび公表されたグローバルCOEプログラムに対する中間評価であり、初めて経験する低い評価である。しかし、この評価については、遺憾ながら、以下の諸点において率直なコメントを表明せざるをえない(具体的な問題点については、以下の各箇所で引用・言及する)。

 <専門委員に企業法制の専門家がゼロであること>
 第一に、21世紀COEの際の社会科学の審査・評価部会専門委員名簿には、採択時で23名中に7名の法律家がおり、うち2名は商法学者という専門家がいた(資料E)。民法の瀬川教授も財産法専門である。21世紀COEの中間評価の際にも、審査・評価部会委員名簿には22名中に6名の法律家がおりうち3名は商法学者であった(資料F)。もとより商法学者は会社法の専門家である。しかるに、グローバルCOEについては、採択時の22名、このたびの中間評価時の21名の委員の中に、そもそも法律家が全体で4名と2名減少し、商法・会社法の専門家は皆無である(資料GH—HはGより全体で一名減少したのみで他は全く同じ顔ぶれである)。法の意義が格別重要な今日の日本のこの時代に、また企業法制の論理が根本部分で変化・動揺する時代に法理論の創造を掲げる最先端の研究テーマを評価するについて、企業法制に関する専門家が一人もいないという審査・評価部会専門委員による評価には疑念を抱かざるを得ない。もとより狭義の専門家でなくても、およそ社会科学分野において高い見識を有する委員の意見に謙虚に耳を傾けるべきことは当然である。しかしそれでも、企業法制の専門家がただの一人もいない審査・評価がありうるのであろうか。こうした委員構成での評価結果をもって、専門委員による公正かつ厳正な審査がなされたと言えるのであろうか。このことを21世紀COEから8年間ほどにわたって真摯な研究活動を行ってきた研究者にどのように説明したらよいのであろうか。

 <採択時の評価と正反対の注文をつけていること>
 第二に、グローバルCOE採択時には、「21世紀COEプログラムの実績をさらに発展・深化させ、より高次の目標である成熟市民社会の構築と、これと一体の企業法制の再構築という新しい法律学の創造を目指す計画であり、優れたプログラムとして評価できる」と評価した(資料G)、その同じ構成の審査・評価部会委員が(資料H−Gに比べて1名減だけが異なる)、今回の中間評価では、「このプログラムが21世紀COEプログラム拠点の延長線上に止まるものなのか、それとは異なる独自の新たな内実を有するものであるか明確でない」と述べ、そのうえで21世紀COEとは異なる独自の新たな成果を生み出すことが期待される、としていることは、採択時に21世紀COEプログラムの実績をさらに発展・深化させ、より高次の目標を掲げる点を評価したことと完全に矛盾しているのではなかろうか。
 1月17日に公表された、グローバルCOEプログラム委員会による「平成20年度採択拠点中間評価結果について」(日本学術振興会HPにより入手可)では、国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援し、もって国際競争力ある大学作りを推進するとして、研究拠点への期待が示されているが、そのDとして、申請内容により、「21世紀COEプログラムに採択されている拠点については、21世紀COEプログラムで期待された成果が十分に得られていること」が条件の一つとされ、こうした条件の下で採択された拠点形成計画に対して重点的支援を行うのが、グローバルCOE事業であることが明記されている。こうした認識を踏まえて、我々の拠点が採択され、そのことが、21世紀COEの実績をさらに発展・深化させることのできる優れたプログラムとの採択時の評価に繋がっていたものと思われる。我々も当然にそのように理解し研究活動に邁進してきたものである。
 しかるにこの時点で、21世紀COEとは異なる独自の成果を求めることは、審査・評価部会専門委員自身が責任のある評価を実施できない実情を示していると受け止めざるをえないのではなかろうか。21世紀COEの研究活動を発展・深化させることを期待され、日本の法律学・企業法学の創造が着実に行われていると評価され続け、世界レベルでの拠点形成を期待されてきた我々の拠点が、今回のグローバルCOEの中間評価の時点、それは21世紀COEとグローバルCOEとを合わせて10年間の研究活動のうち、8年目の研究活動も後半に入るという段階で、初めて、それまでの評価を覆すのであれば、それは採択当初の評価が誤っていたか、今回の中間評価が誤っているかのいずれかなのではなかろうか。仮に採択時の評価の方が誤っていたとしたら、その評価は前記の、21世紀COEプログラムに採択された拠点については、21世紀COEプログラムで得られた成果が十分に得られていることを求めている、グローバルCOE事業の本旨に反しているようにも思われる。我々としてはこれをどう受け止めて良いのか、戸惑いを覚えざるをえないところである。
 中間評価の非公表<参考意見>には、「本プログラムに対する評価過程では、当初目的の達成に懸念を持ち、計画の適切な変更を求める評価部会委員が相当数いたことをお伝えして、今後一層の努力を求めたい」との指摘が記されているが、ここで「当初目的」とは何を意味しているのであろうか。「(21世紀COEで)これまで挙げてきた実績をさらに発展・深化させ、より高次の目標を掲げる優れたプログラムである」と評価されたものが「当初」目的のはずであるから、この段階で21世紀COEとは異なる新たな独自の成果を求める姿勢との関係はどうなるのであろうか。当初目的の達成を求めながら、当初目的の変更を求めているとしか読めないのであるが、これを我々はどのように受け止めたら良いのであろうか。

 <各法分野の研究が拠点形成の基本概念によって統合されていないとの指摘について>
 第三に、本中間評価は「拠点形成全体については、『成熟市民社会型企業法制の創造』という基本概念によって拠点全体として教育・研究が統合されているとは言えない。各事業推進担当者の研究も、それぞれの視点と関心に基づき進められているに止まる。」としているが、上記のようにこれまでの、企業法制・会社法制の専門家を複数含む社会科学の審査・評価部会専門委員において、そうした統合された横断的研究こそが十分に達成され、高く評価できる、とされていたことをどのように受け止めたら良いのであろうか。従来の評価の蓄積をこの段階で全く否定するからには、専門家によるそれなりの明快な理由と根拠を示すべきと思われるが、そのような指摘はない。本拠点の形成目的は、従来の法律学の世界では、基礎法、憲法、民法、商法、労働法、刑事法、手続法といった各法分野が縦割りに、相互の関係性に留意することなく、バラバラに研究活動を行ってきたことに対する反省から、これをすべての法分野が「企業・市場・市民社会」という三つのキーワードを共有することで横断的な研究活動を行い、欧米をも凌ぐような21世紀の新しい日本の法律学を創造しようとしたところにあり、現にそれを着実に実施したとの高い評価が従来の審査・評価部会専門委員によって示されてきたところである。拠点リーダーは、専門外の研究会・シンポジウムにもできるだけ出席することで、このことに最も留意し、そのために多くの時間を割いてきた。
 それを各分野がバラバラに独自の関心に基づいて研究をしているだけだと突き放すのであれば、それは各法分野の理論状況に対する真の意味における専門的な知見を踏まえなければならないはずであり、専門家としての知性と良心を賭けた覚悟が求められるはずであるが、そうしたことをなし得る専門家がそもそも審査・評価部会において皆無でありながら、そうした評価がどのようになしえたのか疑念が生ずるのはやむを得ないのではなかろうか。

 中間評価には、後段に「研究活動面では、個々の事業推進担当者の専門分野については、着実に成果が上がっていると評価できる。」との指摘もあるが、これらの各法分野の研究成果は、すべて伝統的には会社法や金融法の専門分野ではないにもかかわらず、基礎法が、憲法が、労働法が、刑事法が、それぞれ企業や市場や市民社会との関係について地道な研究活動を行ってきた成果なのである。どの成果についてもこのことは確実に指摘できる。これらの成果が本拠点の拠点形成目的と無関係に、バラバラに恣意的になされた研究成果であると、なぜ判断しうるのであろうか。

 ここで各法分野における横断的研究の成果を上げるのは枚挙にいとまがない(21世紀COEの成果報告書、グローバルCOEの申請書、このたびの中間プレゼン資料を本拠点のHPにおいて入手可能である)。ここでくどくどと成果を羅列することはしないが、最小限だけ述べておく。
 例えば,基礎法が企業をテーマに研究活動を行うことは従来ほぼなされてこなかったが、この分野での多大な成果は法律学の新しい地平を示したとして高い評価を得ている(叢書第一巻『企業・市場・市民社会の基礎法学的考察』、戒能・石田・上村編著『法創造の比較法学−先端的課題への挑戦』<日本評論社>はほんの一例である)。こうした実績は過去においてありえなかった横断的共同研究であり、ここから様々な新しい法学的知見が見いだされている。
 憲法が経済秩序や企業・市場をテーマに掲げることは過去においてほぼなかったことであるが、地道な定期的かつ全国レベルの研究会を通じて目を見張る成果が公開されている(叢書第二巻『企業の憲法的基礎』、機関誌特集『憲法と経済秩序』、『憲法学に問う−会社法学からの問題提起』法律時報特集等々)。GCOEの研究活動を通じて憲法学が変わりつつあるとの評価すらある。これを横断的研究とは言えない独自の関心にすぎないと言い切る審査・評価部会委員の見解の根拠は何なのだろうか。
 労働法はGCOEの研究活動を通じて、会社法学との協働の機運が著しく高まっており、労働法学会での会社法専門家との共同研究へとその成果は発展している。会社法に欠けた労働者概念、労働法に欠けた企業概念の認識は、新しい法律学の創造と言うにまさに相応しい成果を生んでいる(GCOE叢書第六巻「労働と環境」、日本労働法学会誌「企業システム・企業法制の変化と労働法」、連合における会社法研究会の設置、その他)。
 刑事法学も従来は企業と市場に関する問題でも伝統的な刑法の概念のみによって議論が行われる傾向が強かったが、多くの予算を投入して実施されたGCOEでの6カ国犯罪等実態調査の成果は国際的にも高く評価されている(甲斐・田口編著『企業活動と刑事規制の国際動向』<商事法務>、叢書第五巻『企業活動と刑事規制』等々)。刑事法研究者はまさしく「成熟市民社会型企業法制」の視点を共有することでこうした成果を上げることが出来たと強く認識しており、このたびの中間評価に対する不満には相当に大きなものがある。

 <重要な具体的政策提言もすべて拠点形成目的と一体のもの>

 第四に、本拠点の特色は、共有する理念に基づいて、企業・金融・資本市場法制の再構築のみならず、各法分野における独自の新しい理論展開の創造を目指すところにあるが、これに加えてシンクタンク機能を重視し、具体的な政策提言を行うことを重視してきた。その具体的成果は様々なものがあるが、第一に、アジアプロ向け債券市場構想は、いまや政府の新成長戦略として公的に認知され、まさに具体化されつつある。この構想がなぜ日本主導で行われるかについては、日本の成熟市民社会に根ざした企業・金融・資本市場法制およびそれらの法制を基礎付ける法の総合力に対する信頼にある。日本の金融商品取引法に世界ではじめて、法目的として「公正な価格形成」「資本市場機能の確保」が謳われていることも日本の法制の優位性を物語っている。こうした優位性は日本の法律学が欧米の法制を真摯に学ぶ、比較法の視点を持ち続けた世界でも稀な民族であることとも関係する。中間評価の審査・評価部会委員はこうした具体的提言も、誰かが拠点の基本構想とは無関係にバラバラにやっていることにすぎないと言うのであろうか。
 また、同じく我々が強力に推進してきた金融ADR法構想は、既に立法化され、2010年4月に施行されたところであるが、これもアメリカ一点張りの日本の動向に対して議論の対立軸を示すとの方針の下、英国の制度研究を一貫して実施してきた我々の研究成果の表現であることは疑いない。制定法よりも自主規制の権威の方が高いという英国流の制度のあり方への認識は、成熟市民社会型の規範意識やルールのあり方に対する我々の拠点の問題意識から生じたものなのである。
 同じくM&A法制論議についても、近時はアメリカ法中心の企業価値研究会の報告書に言及されることは少なくなってきており、むしろ英国、ヨーロッパ法制の研究が大いに推進されるようになった。これも本拠点の「議論の対立軸を示す」との研究姿勢とそれに基づく欧州法制研究が大きな貢献を行ってきたことは確かであろう。
 さらに、近時話題となっている「公開会社法構想」は本拠点を推進母体としてきたという経緯があるが、これも金融商品取引法適用会社(上場会社ないし有価証券報告書提出会社)にあっては、資本市場が要求する情報開示や会計・監査・内部統制の実行部隊としてのガバナンスという視点を強調することから、投資家のためのガバナンスをまずは主張し、その後で「買い」を行った投資家である「株主」を位置づける。欧米のように株主・投資家とは個人ないし、個人に対して厳しい受託者責任を負うために、個人と数えることに違和感のない機関投資家を意味するとの観念を前提にすれば、資本市場とは市民社会であるという欧米流の観念と結びつくことになる。その上で、企業社会と市民社会の結節点として株式市場を構想した戦後の証券民主化構想の60年遅れの実施を、今こそ強調しようとするものである。これも、まさしく市民社会論と企業法制の分かちがたい関係の上に成り立つ構想である。まさしく本拠点の形成目的が会社法の具体的構想の中に生かされているのである。中間評価は、これも商法学者がバラバラに研究してきたものにすぎないとされるのであろうか。

 <中国立法機関との研究交流も日本の法律学に対する彼らの敬意を背景としている>
 中国の全人代常務委員会法制工作委員会とは13の法分野に及ぶ立法協力を実施してきたが、それは日本が中国の喫緊の課題に関係する法制を先んじて用意してきていることと、日本の外国法理解の深さに対する信頼に基づくものである。これも、本拠点の問題意識を共有する中で両者の信頼関係が高まってきたものであり、そうしたことと無関係に日本の貴重な文化貢献とも言える法および比較法交流はまったく成り立たない。こうしたことへの理解が、審査・評価部会委員において十分になされているのであろうか。
 中国証券監督管理委員会(CSRC)、韓国金融監督院との三者交流についてもこれとまったく同じことが言える。

 <若手研究者養成−早稲田の必死の取り組み>
 中間評価では、法科大学院発足後の実定法若手研究者の育成には、特段の工夫が期待される、とされており、非公表<参考意見>にも同様の指摘がある。このことは非常に重要な問題であり、中間プレゼンテーションの際にも、法律家委員からこれに関する質問がなされた。法科大学院発足により、法科大学院を卒業した者が直接博士後期課程に進学することが想定されて、東大、京大、一橋大学といった大学で大学院法学研究科の実定法分野の修士課程が廃止されてしまった。しかも、法科大学院卒業生から研究者を志望する者もほとんどいない。そうした状況の中で、早稲田大学は学部の充実と研究者養成の重要性をもっとも強く認識し、学部学生数(学則定数)700名を維持し(現在は740名−手続者は事実上800名を相当数超える)、大学院の修士課程も必死に維持してきた。それに加えて、法学研究者志望者用相談窓口を用意し、2010年入学者のアンケートでは1年生段階で14名の研究者志望者を数えるに至った(これは少ないようだが、全国の法学系の中では突出した数字と思われる)。このことは中間プレゼンテーションでも力説したところである。その際にこの問題を質問された法学者委員は、それを承知の上で早稲田に頼るしかないというお気持ちで質問されたのではないか、と受け止めたが、法学者以外の委員で、若手法学研究者養成が全国で壊滅的な状態にあること、その中で早稲田が懸命に事態打開のために努力していることを理解している委員がどの程度いるのだろうか。学位授与数の増大にしても、大学院教育が壊滅的な状況にあることを踏まえての注文なのか、疑問がないではない(中間プレゼンテーションでは、今後一気に増える潜在候補者が蓄積している旨を述べたが、この3月には一気に10名の法学博士学位を新たに授与することとなった−課程博士8名、論文博士2名)。

 <大学の最重要領域として位置づけていることを全体として適切としているのはなぜか>
 中間評価は冒頭で、「大学の将来構想と組織的な支援については、『Waseda Next 125』のもとに本プログラムを大学の最重要領域の一つに位置づけて、教育・研究活動及び経費・施設などにおいて重点的に支援されており,全体として適切である」としているが、上記のように、本拠点に対しては、この段階で研究の方向を改め、21世紀COEプログラムとは異なる独自の新たな成果を生み出すことが期待される、としている以上、また非公表<参考意見>でも、計画の適切な変更を求める委員が相当数いたとの指摘がなされている以上、従来の研究方針を踏まえて、大学が本プログラムを最重要領域の一つに位置づけていることも、問題ということになるのではないかと思われるが、ここでは、本プログラムを最重点領域に位置づけていることを適切としている。ここで適切とは、いかなる研究内容を指しているのか理解できない。このことは全体として、中間評価の指摘の非専門性を物語っているようにも思われるが、これは誤解であろうか。

 <中間評価の要望にどのように対応して良いのか困惑が大きい>
 本拠点は日本で唯一の独立系の総合法学研究所である。ここでの活動はあたかも株式会社形態をとる民間の総合研究所のように、一種の事業活動のように、役員体制、事務局体制、研究企画体制を確立した上で多角的に実施されている。二人の専任の教授と3,4名の助手、15名ほどのRA達が、各法分野ごとに企画を立て、これを四役会を中心に評価して、まさに人海戦術的に研究活動を実施してきている。21世紀COEの当初予算7000万円程が、年々の高い評価により、グローバルCOE採択時には3割の間接経費を合わせて2億2000万円の予算規模となっていた。これが昨年は事業仕分けによって間接経費ゼロとなり(全体予算の3割減)、人件費を本体経費で賄わなければならなくなった。それが本年は、突然の低評価によりさらに18.8%の減額し、二年間で約1億円の減額となった。
 本拠点のように、日本のGCOEの中でも珍しい総合研究所形態で研究活動を実施してきた箇所にとって、人件費を差し引けば、既に今後研究面で実施できることは著しく制限されることとなった。そこへもってきて、既述のように、本プログラムに対しては、前身である21世紀COEプログラム拠点とは異なる独自の新たな成果を生み出すことが期待される、と指摘された(この指摘が本拠点採択時の、前身である『21世紀COEの実績をさらに発展・深化させ、より高次の目標を掲げる』点を評価したことと正反対の指摘であること等については前述した)。しかし、今まで一貫して評価してきた研究とは異なる独自の新たな成果を、21世紀COEと合わせて10年間のうち、残り2年というこの段階で、しかも総合研究所の屋台骨を取り壊すほどの予算減の中で実施するように要求されてもただ戸惑うばかりである。この段階でのそのような指摘は、グローバルCOE採択時の高い評価が、根本的に誤っていたと言われたに等しいためである。
 我々としては、当面、日本の企業社会、経済社会にとってきわめて重要と信ずる問題の研究を,研究者としての良心に従って、可能な範囲で引き続き真摯に実施して行きつつ、中間評価の指摘をできるだけ前向きに受け止めるように努めたいと考えている。
拠点リーダー  上村達男
(略歴はこちら)










 

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